1) I/I (不明水)診断
1. 不明水とは、どのようなものですか?
不明水とは、浸入水(雨天時・常時)、有収外汚水(浸入水以外の、水道料金では算入できない不明水)、漏水(マイナスの不明水)で構成されます。
上記の浸入水(常時)は、雨天時浸入水以外の浸入水の事で、『分流式下水道における雨天時増水対策の手引き(財)下水道新技術推進機構』(以下マニュアル)では、地下水浸入水と表記されています。
2. 不明水対策調査は、国庫補助事業の対象なのでしょうか?
国土交通省の通達に基づく実施例があることから、不明水対策調査は国庫補助対象です。
3. 深夜作業を伴う遡流式分布調査で、住民からの苦情はありませんか?
ほとんど苦情はありません。
あらかじめ作業内容や日時、服装(身分証・腕章)を周知することや、昼間に調査対象のマンホール蓋を一度開けておくことで、大きな音が出ないように工夫しています。
4. 雨天時増水対策(溢水対応)と浸入水削減対策とでは、どちらが優先されますか?
溢水は、二次災害(公衆衛生上の汚損、施設冠水によるポンプ等の故障、人孔蓋の飛散、交通事故、人身事故など)を起こし、場合によっては維持管理費の何百倍の費用が発生するため、施設増強による雨天時増水対策が、削減対策よりも優先されることは明らかです。
ただし、地下水位が高く、年間を通して常時浸入水が非常に多い場合、無駄な下水処理と過負荷処理による環境汚染、浸入水に伴う土砂引き込みによる道路陥没や交通事故を招来するため、削減対策と増水対策を平行して行う必要があります。
5. 溢水対策における施設増強対策とは、どのようなものですか?
バイパスの設置、管渠の拡径、貯留施設の設置、ポンプ施設の増設や、ポンプ交換や作動ルーチンの変更による、ポンプ能力の強化対策のことをいいます。
6. 水位調査だけで不明水を定量できますか?
結論から言うと、水位調査だけで不明水を定量することには問題があります。とくに上下流測点で挟まれた区間流量は、差分誤差紛れて解析評価に耐えないことが少なくありません。
あとから、精度を担保できない定量結果(流量値)だけが独り歩きすることがないよう、不明水の定量評価には水位調査ではなく、ぜひ流量調査をご利用ください。
詳しくは、添付資料をご覧ください。
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水位調査から計算される流量の実用精度(PDF)
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別表・流量計測方式比較表(PDF)
7. 不明水マップを作りたいのですが?
圧力チップによる水位スクリーニングにより、処理区・排水区・開発団地・建設経過年数・住居区分別等、様々な規模を対象としたマップを短期間かつ経済的に作成することができます。
8. 水位情報だけで不明水対策エリアを絞り込むことができますか?
晴天日平均水位・最低水位、雨天日最高水位・平均水位、水位管径比に組み合わせにより、不明水対策が必要な地域を絞り込むことができます。
9. マニング公式を利用して、水位情報を流量情報に変換することはできますか?
できますが、代表的な粗度係数と計画管勾配を用いる方法は、精度が期待できません。また管底付近水位や満管付近および満管を超える水位は精度を期待できません。逆流・滞留がなく水位変化が緩やかなケースでは、平均流速実測値から計算する粗度勾配係数を使って比較的精度よく流量を計算することができます。
2) CSO(合流式下水道雨天時越流)診断
1. 雨水吐きの放流量を正確に計測することは可能ですか?
3つの方法があります
① 越流堰の水位を測る方法:横越流する刃型堰ではなく広頂堰であるため、残念ながらJISに掲載されているような精度は期待できません。簡易的な方法としては、堰の両端の水位を圧力チップで計測し、平均水位を用いる方法があります。
② 放流渠の流量を面速式流量計で測る方法:越流堰から放流口までに直線距離があり、放流口からのバックがないことを条件に計測が可能です。
③ 合流管流量と遮集管流量の差分を取る方法:精度的にはこの方法が最も期待できますが、器差を揃えた流量計2台を必要とします。
2. CSOスクリーニングにより、越流マップを作りたいのですが?
圧力チップを用いる①の方法により、降雨量(降雨強度)と越流の関係を、全雨水吐きで確認することができます。降雨初期負荷量調査は、この結果に基づいて行うのが合理的です。
3. 降雨初期越流負荷量調査の空振り対策はありますか?
設置場所と自動採水器の空振りを見込んで余分に設置する制約を要しますが、越流水位トリガとプログラム採水コントローラ、自動採水器の組み合わせにより、空振りがあっても、自動採水器1台分の空振りで済ます方法があります。
3) SSO(分流式下水道雨天時越流)診断
1. SSOの実情を教えてください
SSOとは雨天時に汚水が人孔から溢水したり、処理場・ポンプ場の冠水を引き起こすような現象で、原因は雨天時浸入水と常時多い地下水浸入水、相対的な流下能力不足によって生じます。この問題はあってはならないという建前から潜在化しやすいのですが、多くの自治体が持つ共通の悩みで、バイパス放流など今も大きな問題を抱えています。
2. SSOの問題を解決することは可能ですか?
従来法の中では解決が困難な問題であると認識されています。日本以外の先進国でも同様の悩みを抱えており、CSOと同様の実務対応で問題解決が図られることが期待されています。
3. SSOのスクリーニングは可能ですか?
可能です。圧力チップによる水位スクリーニングにより、降雨量(降雨強度)と管径および管径比水位、実務対応としての管内貯留の水位変化調査を組み合わせて、俯瞰レベル(対策の分母レベル)で問題点を抽出することができます。
4) 雨水管理関連診断
1. 雨水管理の実情を教えてください。
雨水問題とは、降雨時に雨水人孔・雨水桝・側溝・水路から溢水し、浸水(内水)を生じるもので、都市化にともなうゲリラ降雨・舗装化による短時間流入など、地域を問わず看過できない実情があって、喫緊の問題解決が求められています。
2. 雨水管理スクリーニングは有効ですか?
降雨時の管内水位の挙動を面的に調べることは、雨水管理に必要不可欠です。流出解析モデルのパラメータの取り方や解析に重要な情報選択、合理的な流入ゲート操作フローなど、様ざまな適用が見込まれます。
3. モニタリング施設の設計に使えますか?
施設設計の前に、どのような水位情報を得ることができるかを事前に知ることは、道理的なモニタリング施設設計に極めて有用です。
5) 下水熱関連診断
1. 下水熱負荷量を簡単に計測する方法はありますか?
圧力チップは温度計を内蔵しており、簡易的には水位から計算した流量と温度を乗算して簡単に負荷量を計算することができます。
2. 事業排水の下水熱利用で、正確に下水熱負荷量を計測する方法はありますか?
排水管径に応じて、PBフリューム式または面速式流量計と温度ロガーの組み合わせ調査をお勧めします。
6) 事業排水管理関連診断
1. 悪水(無届排水)先を特定することはできますか?
圧力チップによる、対象先の水位・温度スクリーニングにより、一般排水パターンとの差を利用して、悪水先の目星をつけることができます。
2. 広域事業所内の不明水特定はできますか?
圧力チップによる水位スクリーニングを適用して、浸入水ルートやスパンを特定できます。
3. 下水メータによる下水使用量認定に適用できますか?
国家標準とのトレーサビリティを有する流量計との比較試験による認定、自治体(下水道管理者)立ち合いによる精度確認、データを改ざんできないシステムなどのコンプライアンスを必要とします。